朝倉行宣さん
お寺の暗い本堂に、最新の機器を駆使したテクノ音楽が流れる。読経も機械的な声に処理されている。明滅する極彩色の光や文様が、おごそかに、時に激しく仏像やスクリーンに投影される。これを「テクノ法要」と呼ぶ。
福井市にある浄土真宗本願寺派の照恩(しょうおん)寺。「阿弥陀様は光の存在です。昔はお浄土を表現しようと、寺の内部にきらびやかな装飾を施しました。私も同じ思いで挑戦しています」。初めは反発を心配した。しかし、返ってきた言葉は「お浄土ってきれいねえ」。
2年前、住職だった父の後を継ぎ、お参りに来る人の少なさに危機感を持った。「失敗してもいい。何かしなければ」。20代前半に京都市のライブハウスでDJと照明を担当していた。その経験を生かそうと考えた。
東京の築地本願寺で、若者ら約750人に披露したばかり。ツイッターで「世界観すごい」といった反響が相次ぐ。
胸の奥には、若い世代に仏教の本質に触れてもらいたいとの願いがある。例えば、ものごとを正しく見る「正見(しょうけん)」。一つの見方にとらわれず、多面的に見る知恵を持って自分の中の暗さや苦しみに付き合ってほしい。
「仏教は死者のためというより、生きている我々のためのもの。テクノ法要はあくまできっかけづくりです」(文・写真 磯村健太郎)