スティーブン・バノン前米大統領首席戦略官=軽部理人撮影
米右派系ニュースサイト「ブライトバート」は9日、会長を務めるスティーブン・バノン前大統領首席戦略官が辞任したと報じた。トランプ政権の内幕を批判的に明かした書籍「炎と怒り」でのバノン氏の発言をめぐり、トランプ大統領とバノン氏の関係が悪化。トランプ氏を支持する立場のブライトバートがバノン氏を切った形だ。
多くの側近がトランプ氏「まぬけ」と…暴露本、完売続出
ブライトバートの報道の中でバノン氏は「ブライトバートの一員として、ほんの短い期間に世界的なニュース媒体を築き上げたことを誇りに思う」と語った。
バノン氏は2012年から会長を務め、白人至上主義的で極右的な論調で情報を発信し、存在感を発揮してきた。16年の大統領選では、グローバル経済に翻弄(ほんろう)された白人労働者層の支持を獲得するため、移民排斥や国境の壁建設、反エスタブリッシュメント(既得権層)など、トランプ氏の「米国第一」政策の旗振り役を務めた。
しかし、ホワイトハウスの大統領首席戦略官になるとトランプ氏を裏で操る存在と見られて孤立。昨年8月に大統領首席戦略官を更迭された後は、ブライトバートの会長に復帰し、トランプ氏の主張を広める活動を続けた。
ただ、5日に発売された「炎と怒り」でバノン氏は、大統領選中にロシア人弁護士と面会したトランプ氏の長男らを「反逆的で非愛国的」と酷評した。怒ったトランプ氏は「小汚いバノン」と批判するなど、最側近だったバノン氏とトランプ氏は決別した。
バノン氏が存在感を示せたのは、トランプ氏との近さ、資金力、発信力の三つの強みがあったからだ。しかし、トランプ氏との関係が悪化した後、バノン氏の後ろ盾で資金源だった富豪がバノン氏との関係を解消すると表明。さらに今回、ブライトバートの会長を辞任したことで発信手段も失ったことになる。(ワシントン=土佐茂生)