大阪大の昨年の入試で出題と採点に誤りがあり、本来合格の30人が不合格とされ、10カ月後に追加合格になった問題。誤りの可能性を指摘する声が3回にわたり外部から寄せられたが、大学が動いたのは3回目の指摘以降だった。指摘はなぜ生かされなかったのか。(沢木香織、長富由希子)
予備校講師「昨夏に指摘したのに…」 阪大入試ミス
大阪大、昨春入試で出題と採点に誤り 30人追加合格に
「別の解答が存在する可能性はないか」。昨年6月、阪大豊中キャンパスで開かれた「物理教育を考える会」で、同2月に実施した一般入試前期日程の理科(物理)の問題について、複数の参加者から阪大の解答に疑問が投げかけられた。会は近畿の大学入試問題について意見交換する場で、大学や高校の教員、塾講師ら約50人が集った。
会に参加した駿台予備学校の物理講師、古大工(こだいく)晴彦さん(56)も「解答が間違っている」と指摘したが、問題作成者は「阪大の解答例で良いと思います」と回答したという。
駿台予備学校は昨年2月25日の入試直後にホームページで公開した解答速報で、古大工さんを中心に検討した阪大とは別の解答を掲載。同9月発行の大学入試完全対策シリーズでも阪大とは異なる解答を掲載し、解説した。
昨年8月には東京都内の予備校講師、吉田弘幸さん(54)が阪大に対し、メールで「問題設定に不自然さがある」と指摘した。阪大からは一度は阪大としての解答を知らせるメールが届いたが、吉田さんが再度指摘した「理論的な誤りがある」とのメールには返信がなかった。
阪大によると、6月の指摘は大学内で共有されなかったという。8月の指摘は入試課が把握したが、内容は問題を作成した責任者、副責任者だけで検討したといい、阪大は「2人は自分たちの解答が正しいと強く思っていた」と説明する。
結局、12月に別の「物理に造…