烏帽子岳展望所に集まった韓国人観光客=長崎県対馬市、飯塚晋一撮影
白波の立つ海の向こうにビル街がかすんで見えた。「ほら、あそこ」「あれが釜山(プサン)」。どよめく声は韓国語だ。
長崎県対馬市。人口約3万1千人の島に昨年、韓国から30万人以上が訪れた。10年前の5倍超。韓国第2の都市・釜山から約50キロ、船なら最短1時間10分。釜山と結ぶ航路が2000年に定期化し、観光客が増えた。日帰りも多く、7万ウォン(約7千円)ほどからツアーに参加できる。この年末年始も、多い日には約200~440人乗りの7便が入港した。駐車場に観光バスが並び、団体客を待ち構える。
山林が約9割を占め、繁華街やテーマパークがあるわけではない。
「そこが良いんだよ」。昨年末、ソウルから来た50代の男性は3度目の対馬。島中部の烏帽子岳(えぼしだけ)山頂近くからリアス式の海岸を見下ろし、趣味の一眼レフカメラのシャッターを盛んに切った。20代の女子学生は「気軽に外国文化が楽しめる」と、地元のひじきやイカを使った「対馬バーガー」をカフェで注文した。SNSの情報を手がかりに名所や店の行き先を決めるという。
昨年3月、全国チェーンの14階建てホテルがオープンした。「オソオシプシオ(いらっしゃいませ)」などとハングルの看板を掲げる飲食店や土産物店も増えた。スーパーでは、韓国で2~3倍の値段になるというチョコやゼリーが山積みされ、次々と手が伸びる。
日本語ができなくても、店員にスマホで買いたい品の画像を見せ、翻訳アプリでやりとりする。一家4人で初めて来た40代女性に買い物袋の中を見せてもらうと、カップ麺やカレーのルー、化粧品、胃腸薬、湿布薬……。「安いので、3カ月に1回くらい来てもいい」
島北部の比田勝(ひたかつ)で…