参考図2
日本の囲碁界を制し、世界一をめざす井山裕太名人・七冠は、年頭の緒戦を飾れなかった。今月8~10日、中国・雲南省保山市で開催された第5回世界囲碁名人争覇戦は、中韓のトップ棋士2人に敗れ最下位に。2月に日本で打つLG杯決勝三番勝負で巻き返しを期す。
つかの間の正月休みが明けると、井山は超多忙な棋士生活に戻った。5日は大阪・日本棋院関西総本部の打ち初め式と国民栄誉賞の受賞決定会見、6日は地元東大阪市の囲碁まつり。その足で東京に向かい、7日早朝に羽田を発って中国へ。北京、昆明と飛行機を乗り継ぎ、約16時間かけてミャンマー国境の街、保山に到着。その夜の組み合わせ抽選で翌朝の対局となった。
保山はメノウや翡翠(ひすい)、琥珀(こはく)の産地で、これらを使った碁石が名産品だ。中世の明朝時代には皇帝に献上されたといわれる。会場の永子棋院は、中華風の豪壮な楼閣造りの8階建て。井山と中国の連笑名人との対局には50人以上の取材陣が待ち構えていた。
握って井山の先番。右下のAI定石から黒の大模様、白の実利の構図に。連の下辺白34の打ち込みから開戦し、黒の攻めに白のさばきが焦点になった。中央黒53の引きには、参考図1の黒1のアテから最強手段でいくべきだった、と井山。白6にはすっぽかして黒7とカカえてしまう。「白2と逃げ出して取られると、少々のことでは取り戻せないくらいの損になる」と言う。下辺は黒11まで耐えている。
決め手を逃したが、白70の切断に、黒71から73が鮮やかな切り返し。黒79まで隅をえぐって治まった。左上の白模様には黒81の三々から策動。隅をおとりに87から91と上辺をめいっぱいに荒らし、黒優勢だ。
しかし、秒読みの中で打った左…