安倍晋三首相は9日午後、平昌(ピョンチャン)冬季五輪の開会式出席に合わせて韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領と会談した。慰安婦問題をめぐる日韓合意の履行を強く促したが、韓国政府によると、文氏は「政府間交渉では解決できない」と主張し、議論は平行線に終わった。北朝鮮問題でも首相は日米韓の結束を訴えたが、文氏は「日本も積極的に対話に乗り出すことを願う」と求めた。
会談は五輪会場近くのホテルで1時間行われた。首相の訪韓は昨年5月の文政権発足後は初めてで、約2年3カ月ぶり。文氏との会談は昨年9月のロシア・ウラジオストク以来3回目。
日本側の説明によると、首相は日韓合意について「国と国との約束であり、政権が変わっても約束を守るのは国際的かつ普遍的に認められた原則だ」と文氏に強調。「合意の約束を全て実行してほしい」とも述べ、韓国内の日本公館付近に設置された慰安婦問題を象徴する少女像の移転に向けた努力も求めた。
一方、韓国大統領府によると、文氏は合意の再交渉という言葉は使わなかったものの、「元慰安婦の心の傷を癒やすために両政府が継続して努力すべきだ」と主張した。
北朝鮮問題で首相は「日米で完全に一致した(圧力強化の)確固たる方針を文大統領と改めて確認した」と記者団に述べた。(平昌=松井望美、武田肇)
慰安婦合意、主張言い合うだけ
朝鮮半島情勢が緊迫する中、韓国で開幕した平昌(ピョンチャン)五輪は、日米と北朝鮮が韓国を挟んで綱引きしあう外交舞台になった。安倍晋三首相にとっては、国内の反対論を押し切ったうえでの覚悟の訪韓だったが、手応えはいま一つのようだ。9日の日韓首脳会談で首相は、対北朝鮮での連携を文在寅(ムンジェイン)大統領に求めたが、温度差は否めない。慰安婦問題での日韓合意については互いの主張を言い合うだけで進展はなかった。
「日韓米3カ国の強固な協力関…