聖火リレーを走り終え、手を振る朝日新聞の前田大輔記者=7日、韓国・江原道旌善郡、北村玲奈撮影
まるでカーニバルのようだった。7日、アルペンスキー会場がある旌善(チョンソン)郡で聖火リレーに参加した。東京五輪に向けた取材を続けるなか、国際オリンピック委員会(IOC)から参加の打診があった。
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リレーのメインスポンサー3社のロゴが入った3台のバスが、大音響で先導する。スタッフがハイタッチで走者を出迎え、スマートフォンのカメラを向けた。狙いは「SNS映え」する写真や動画だ。
トーチに聖火がともり、走り出すと、スタッフから「ゆっくり」と注意された。「ジャンプして」「家族にメッセージを言って」。次々と注文が飛ぶ。恥ずかしかったが、沿道の笑顔を見ると自分もニコニコしていた。担当する数百メートルはあっという間だった。
祭りのようなリレーは、若者受けを狙ったIOCの戦略で、近年は夏冬を問わず踏襲されている。2年後の春に始まる予定の東京五輪のリレーも、似た形になりそうだ。伴走者と隊列を組んで聖火をつないだ1964年大会から、大きく様変わりする。
心配なこともある。「復興五輪」を掲げる東京五輪のリレーは、東日本大震災や熊本地震などの被災地を重点的に巡る方針だ。オレンジの炎に元気づけられる人もいるだろう。だが、鎮魂の祈りを込めるのならば、ただのお祭り騒ぎにしない工夫も求められる。(前田大輔)