距離女子10キロフリーで74位になったブラジルのジャケリネ・モウラウ=細川卓撮影
まさに、競技の枠を超えた二刀流。自転車とスキーで夏冬合わせて、五輪出場は6回目となった。「最高の気分。ここに来られただけで、満足だ」。42歳のジャケリネ・モウラウは、そう言ってほほえんだ。
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15日の距離女子10キロフリーに出場した。90人中、74位。30分50秒3は、トップから約5分50秒遅かった。2010年に同じ種目に出たときは、66位。自己最高の更新もならなかった。それでも、母国・ブラジルのメディアに囲まれると、笑顔でハイタッチ。澄み切った青空を眺め「今日は完璧な、美しい一日だった」。
サッカー、サンバ、ビーチ……。雪とは縁遠い国で育った。元々は、山道を自転車で走るマウンテンバイクの選手。初めての五輪は04年のアテネ大会だった。
結婚が人生の転機となった。1998年・長野五輪の距離に出場したカナダ人の夫からスキーを教わり、05年から距離スキーを始めた。翌年のトリノ大会で、冬季五輪初出場。夏冬両方の五輪に出場した初のブラジル人女子選手になった。そのことを今でも「誇り」に思っている。
自転車は、08年北京五輪でキャリアを終えた。開会式で旗手の大役を務めた14年のソチ五輪は“三刀流”になった。スキーとライフル射撃を組み合わせた競技・バイアスロンにも出場したのだ。ソチ五輪後に第2子を出産。子育てと競技の両立を考え、今は距離だけに絞っている。
ブラジルでは、海辺の砂浜をスキーで滑った。今は夫の母国カナダにも拠点を置く。だから、寒さにも慣れっこ。「この五輪前にマイナス27度を経験した」と平昌の寒さも気にしない。
4年後の北京五輪まで競技を続ける? そう問われ「たぶん」。実は「自転車は今でも大好き。練習では続けている」。もしかしたら、20年東京五輪で見られるかもしれない。(勝見壮史)