小学2年生の羽生結弦(手前)と山田真実さん(山田真実さん提供)
16日に行われたフィギュアスケート男子ショートプログラム(SP)で、羽生結弦(23)=ANA=がトップに立った。昨年11月に痛めた右足首の影響を感じさせない圧巻の演技に、かつての指導者たちは驚きと喜びの声をあげた。17日のフリーで、2大会連続となる金メダルに挑む。
羽生結弦、首位の輝き ショパンと共鳴、観客からため息
言葉を動きに、動きを言葉に。「孤高の星 羽生結弦」
特集:平昌オリンピック
「緊張してるんだな」。小学2年生まで仙台市でコーチを務めた山田真実さん(44)は、リンクに滑り出す羽生をテレビで見て感じた。「彼らしい自由な感じがない。一個でも失敗しちゃいけないみたいな感じ」
それでも、次々とジャンプを決める。着氷の後、両方の拳を握りしめた。「思うようにいっているんだ」。山田さんの心配は、安心に変わった。
指導を始めたころ、羽生はリンク外をドタバタと走り、練習を始めても10分ほどで飽きてどこかに行ってしまった。「やんちゃで、最初の1年くらいはレッスンにならなかった」
ただ、ジャンプの吸収力は高かった。他の子が1年かかる1回転半ジャンプを1日で跳んだ。難しいことをやるときほど食いつきがいい。2回転ジャンプが未完成のとき、あえて2回転半に挑戦させた。
そのころから頭や手足を思い切って振り、全身で何かを表現しようとしていた。観客を喜ばせる方法を知っているようだった。「どこからその自信が出てくるのかと思うほど『自分はできる』と思い込んでいた」という。
SPを終えた羽生は、表情を緩め、両手をたたいてファンの声援に応えた。
山田さんの後、仙台で羽生を中学まで指導した都築章一郎さん(80)はそんな様子にホッとした。「いい状態で演技できた。自分のイメージ通りに体をうまくコントロールしていた」
羽生は当時からリンク外でよくイメージトレーニングをしていたという。「けがで氷に上がれないときにも取り組んでいたのだろう。だから、ブランクを乗り越えられた」とみる。
17日のフリーで、2014年のソチ大会に続く連覇を狙う。「重圧のなか(ショートプログラムを)やりきった。人間的な大きさ、心の成長が最も大きい。ブランクによるスタミナ不足は集中力で補ってほしい」(後藤太輔、西村奈緒美、高浜行人)