埼玉県熊谷市で2015年、民家3軒で6人を殺害したなどとして、強盗殺人などの罪に問われたペルー国籍の無職ナカダ・ルデナ・バイロン・ジョナタン被告(32)の裁判員裁判の論告求刑公判が19日、さいたま地裁(佐々木直人裁判長)で開かれ、検察側は死刑を求刑した。弁護側は最終弁論で、被告が当時精神疾患だったとして無罪を主張する方針だ。
ナカダ・ルデナ被告の起訴内容は、15年9月14日に田崎稔さん(当時55)と美佐枝さん(同53)夫婦、15~16日に白石和代さん(同84)、16日には加藤美和子さん(同41)、長女美咲さん(同10)、次女春花さん(同7)をいずれも包丁で刺すなどして殺害し、現金を奪ったなどというもの。
この日は論告に先立ち、被害者の遺族の意見陳述があり、加藤さんの夫(45)は「妻の人生、娘の人生は何だったのか。自分の家族が殺されて突然一人になったらどう思いますか」と裁判員らに訴え、「被告を許せない」と述べた。
公判で検察側は、被告が遺体を浴槽やクローゼットに隠したり、生活資金や逃走のために現金や車の鍵を盗んだりしたと指摘。被告が違法行為と認識し、目的に沿った行動をとっているなどとして責任能力があると主張してきた。
一方弁護側は、当時被告が妄想にとらわれ、記憶もないなどと主張。弁護側請求による鑑定留置で被告の精神鑑定を実施し、統合失調症だったと診断した男性精神科医は、事件に関する被告の証言が少ないことなどから、善悪の判断能力の有無は「判断できない」と述べ、妄想がなければ「事件に至ることはなかったと思う」などと証言した。(笠原真)