金メダルが決まり、歓声を上げて喜ぶ大久保富美江さんたち=韓国・江陵
悲願だった頂点についに届いた。18日のスピードスケート女子500メートルで、3回目の五輪となる小平奈緒(31)が金メダルに輝いた。スピードスケート日本女子初の金、そして五輪新記録。競技にかける姿勢に魅せられ、声援を送った恩師や所属先の人たち。小平は言った。「みんなにありがとうと伝えたい」
「私のこと笑って見守って」 小平の願い、支えた親友
小平奈緒、五輪新で金 スピード500m 日本女子で初
スケート小平奈緒を全力支援 病院理事長が語る理由とは
小平が所属する相沢病院(長野県)の職員、大久保富美江さん(67)は18日、病院の20人の応援団で会場の江陵(カンヌン)オーバルに駆けつけた。
自分を「奈緒の世話係」と言う。小平が入った9年前から、娘のように思って支えてきた。
小平が力強くスタートする。大久保さんはレースの途中から立ち上がった。ゴールした後、涙がこみ上げた。五輪新記録。「感無量。胸がいっぱいです」
母校の伊那西高校(長野県)の教員ら14人も声援を送った。
小平の担任を3年間務めた奥田綾子教諭(43)も会場に応援に訪れた。シャツには、当時の同級生24人のメッセージを書いた布を縫い付けた。「笑顔とメダルが楽しみ」「努力は裏切らない」。この日のために、各地から送ってもらってつくったという。
小平は高校1年の時から「五輪に行く」と公言していた。合宿や遠征が多く、特に冬場は高校を休みがちだった。当初は「私だけおいてかれてるんじゃないか」と吐露することもあったが、徐々にクラスにも打ち解けた。
合唱コンクールに出られなかった時、同級生全員にフェルトでお守りをつくった。現代文が得意で、スピーチ発表会のクラス代表も務めた。あだ名は「モンチ」。髪形が、人形「モンチッチ」に似ていたためだ。
奥田さんはゴールの瞬間、思わず立ち上がり、ひざの上のスマートフォンを落とした。結果が出ずに苦しんでいた高校時代の小平を思いだし、涙があふれた。「こつこつ頑張れば結果はついてくるんだなって。夢ってかなうんですね」
2010年バンクーバーは12位、14年ソチは5位。その両大会を連覇した李相花(イサンファ)(韓国)が次の組で滑った。タイムは小平に届かない。ついに、ライバルに勝った。
小平はレース後、銀メダルだった李相花(韓国)と抱き合った。涙でかすみ、観客席のみんなの顔は見えなかった。
父安彦さん(62)は観客席から、表彰台の小平と李に拍手を送った。「娘を誇りに思う。人生でこんなにうれしいことはない」(高浜行人)