女子500メートルを制し、場内一周する小平奈緒(右)と2位の李相花=18日、江陵オーバル、細川卓撮影
(18日、平昌五輪スピードスケート女子500メートル)
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小平の強さ、自分の体を熟知しているから 清水宏保
【特集】小平奈緒
特集:平昌オリンピック
最終組のゴール直前、小平奈緒(相沢病院)が、バックストレートにいる結城匡啓(まさひろ)コーチの元に駆け寄った。スピードスケート日本女子初の金メダルが決まると、2人でタッチを交わす。「積み上げてきた技術が500メートルに集約できたと思う」。ただ1人36秒台の五輪新記録で頂点に立ち、涙があふれた。
小平が年に1度、そのスケーティング技術を語る日がある。「技術討論会」
「怒った猫のような背中を意識し、肩を上げる」。「柔軟性や可動域を生かす」。昨年7月、信州大教育学部のキャンパスの一室で、同大スケート部の選手らを前に約1時間話した。
結城コーチが1999年の大学赴任後に始め、2年生以上の部員全員が先々シーズンと先シーズンの滑りを自己分析する。精神論ではなく言葉で技術を理解し、指導ができる人材を育成したいとの思いがある。
小平は大学2年の2006年から続け、これが12回目。滑走時の意識した点などを毎日メモに書き記した「技術カルテ」を参考に、A3用紙2枚の配布資料と映像で、チームメートに説明する。自分の頭の中を整理しながらスケート技術を言語化し、「氷と対話しながら技術的なものを積み上げてこられた」と話す。
3回目の大舞台。持てる技術を込めた。腰を右手でこんこんとたたいてからのスタートは、速く飛び出すために「右骨盤を(中に)入れる」という意識づけ。100メートルは10秒26で通過。カーブ入り口では1歩目の右足で体勢をつくり、出口まで重心を右に残す。第1コーナーで加速し、第2は一気に滑り切った。残りの400メートルは最速の26秒68。合計タイム36秒94を上回る選手は現れなかった。
日本選手団主将として、各競技でメダルという花が咲くよう「百花繚乱(ひゃっかりょうらん)」をテーマに掲げた。これで、今大会の日本勢のメダルは過去最多の1998年長野五輪に並ぶ10個目となった。
「メダルに届かなくともみんなの色で咲き乱れて心強かった。勇気をもらった」。先頭に立つ覚悟を決めた31歳。自ら最も輝く大輪を咲かせてみせた。(榊原一生)
長野五輪以降のスピードスケート女子500メートルの五輪入賞者
第18回 長野(1998年)
③岡崎 朋美
⑤島崎 京子
19回 ソルトレークシティー(2002年)
⑥岡崎 朋美
20回 トリノ(06年)
④岡崎 朋美
⑧大菅小百合
21回 バンクーバー(10年)
⑤吉井小百合
22回 ソチ(14年)
⑤小平 奈緒
23回 平昌(18年)
①小平 奈緒
⑧郷 亜里砂