東京電力福島第一原発事故をめぐり、業務上過失致死傷罪で強制起訴された東電元会長の勝俣恒久被告(77)ら旧経営陣3人の第4回公判が28日、東京地裁であった。事故の3年前、最大で高さ15・7メートルの津波が同原発に到達する可能性を東電側に示した子会社「東電設計」の社員が証人として出廷した。
15・7メートルの津波高は、国の専門機関が2002年に公表した長期地震予測「長期評価」に基づき算定された。07年7月の中越沖地震で東電柏崎刈羽原発にトラブルが発生。これを契機に東電は08年1月、子会社に福島第一原発への津波の高さの解析などを業務委託した。
子会社で原発施設の設計監理などを担当する社員は、東電側から最新の知見に基づき解析するよう依頼を受けた、と説明。子会社は同年3月、長期評価を用いて、最大の津波高が15・7メートルと算出し、東電に報告した。
検察官役の指定弁護士は、子会社から最大15・7メートルの津波高が示された後、旧経営陣3人が津波で深刻な事故が起こる可能性を予見できたと訴えている。一方の弁護側は、長期評価は信頼性に疑問があるとして、事故は予見できなかったと反論している。
「長期評価」は津波や地震研究者らによる専門機関が公表した新しい知見。三陸から房総沖を八つの領域に分け、それぞれの領域ごとに発生し得る地震規模を示した。福島県沖ではマグニチュード(M)7・4前後となるなど、どの領域でも大地震が発生し得ると結論づけていた。(長谷文、後藤遼太)