性同一性障害と診断され戸籍の性別を変更した人が、「変更は誤りだった」として取り消しを求めた裁判手続きで、西日本の家裁が、性別を戻す訴えを認める判断をしていたことが分かった。昨年11月30日付。専門家は「本人の社会生活のため、歓迎すべき判断だ」としている。
家裁の審判や代理人を務めた南和行弁護士(大阪弁護士会)によると、西日本に住む申立人は、自らを性同一性障害だと思い込んで精神科を受診するようになり、2011年にタイで性別適合手術を受けた。同年に国内の精神科医2人に性同一性障害との診断を受けた後、性別の変更を認める特例法に基づき、家裁に申し立てをし、認められた。
だがその後、「生活の混乱の中で思い込んでしまったが誤りだった」と後悔するようになり、日常生活も元の性別で送るようになった。昨年6月に変更の取り消しを求めて家裁に申し立てをし、当初診断した医師の1人による「本人が強く思い込んだことで誤診した」との意見書を家裁に提出。家裁は意見書を根拠に誤診を認め、申立人が元の性別で日常生活を送っていることも考慮して、変更を認めた審判を取り消した。
04年施行の性同一性障害特例法はいったん変更した性別の再変更は想定していない。性同一性障害の診断経験が豊富な針間克己医師は「特例法は、性別の自認は『揺らがない』という前提だが、まれに揺らぐ人はいる。医師が慎重に見極めなければならないが、本人の社会生活のため、一定の条件下では取り消しを認めた方がよく、家裁の判断は妥当だ」と評価した。(千葉雄高)