蒸せば、色とつやが鮮やかなおこしものが完成する=名古屋市瑞穂区の市博物館
「3月3日のひな祭りに食べるお菓子と言えば?」。愛知県生まれの方とそんな話をしていたら、「おこしもの」と言われました。九州出身の記者には聞き慣れないので取材してみると、名古屋市などを中心に一部の地域で食べる習慣が伝わるお菓子でした。(斉藤佑介)
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「かわいいおひな様できたよ」「新幹線だ」。子どもたちの声に混じり、「トントン」と木を打つ音が響く。24日、名古屋市瑞穂区の市博物館で、幼児や保護者ら60人が「おこしもの作り」を体験していた。
「小学生の頃は毎年家族で作りました。男の子も楽しめますね」。そう話す渡辺尚子さん(38)は名古屋市西区出身で約30年ぶりに作ったという。長男の柊(しゅう)くん(6)は「新幹線やチョウチョ、作ったよ。またやりたい」と笑顔を見せた。
講師を務めたのは、大正創業の米店「米久」(南区)の店主で4代目の柘植幸治さん(67)。「おこしものは米粉を熱湯で練った生地を木型で成型し、蒸したお菓子」と説明してくれた。赤、緑、黄で色づけした生地も練り込み、彩りは豊かだ。熱々のできたてをきなこや砂糖じょうゆなどにつけて食べる。
木型から取り外す際に型を立てたり、生地を押しつけて型おこししたりすることから「おこしもの」「おこしもん」「おしもの」と呼ばれる。ひな祭りのひな壇などに供えるという。
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