専用の黒板消しで黒板を消す後藤さん=名古屋市中村区名駅南1丁目
受験シーズンは最終盤。志望校に合格してほっとしている人。残念だった人。結果の明暗はあるものの、合格に向けて努力をしてきた受験生の姿を意外なところから見守ってきた「おばちゃん」がいる。
名古屋市中村区の駿台予備学校名古屋校。教室の前で両手に大きな袋を持って立っているのは、清掃員の後藤茂子さん(65)=同市中川区。袋の中には黒板消しが10個ほど。授業終わりを知らせるチャイムが鳴ると、扉から出てきた講師にぺこりと頭を下げ、入れ替わるように教室に入る。
身長152センチの後藤さんが向かうのは、長さ6メートル、高さ2メートルの黒板。時折背伸びをしながら、びっしり書き込まれた数式や図を、左上からざーっと消し始める。
「おばちゃん、消すの待って」。受験生から言われると、ノートに写し終わるのをじっと待つ。講義の間の10分間で3教室の黒板を消すので、1枚に3分ほどしかかけられない。早くしないと次の講師にせかされる。だけど、「受験生のことが一番だから」と笑う。
20年勤めた工場を定年退職後、6年ほど前に予備校の清掃員になった。「口べたなので、1人で黙々とできる仕事がいいから」
まだ受験生がいない午前6時10分に出勤。100人ほど座れる教室の机を一つずつふく。たくさんの消しゴムのカスがあると、「この子はたくさん考えたんだろうねえ」と想像しながら作業する。
朝早くから教室で勉強している…