ネブラスカ州知事と会談する薗浦首相補佐官=2月22日、ワシントン、土佐茂生撮影
20年以上中断していた、米国と日本の知事が交流する「日米知事会議」が今夏にも日本で開催される見通しとなった。復活の背景には、トランプ政権の誕生で通商・貿易政策に不透明感が漂う中、知事レベルでも信頼関係を構築していこうという日本の思惑がある。
「昨年9月、安倍晋三首相と東京で会っていただいた。政権の重要課題として米国各州と関係を強化するよう首相が指示している」
2月22日、ワシントン市内のホテルの一室。薗浦健太郎首相補佐官が米中西部ネブラスカ州のリケッツ知事に語ると、リケッツ氏も「州知事が首相に会えたことは、訪日の目玉だった」と笑顔で応じた。
全米50州と自治領や準州など計55人の知事が一堂に会する全米知事会冬季総会に合わせ、薗浦氏は訪米。2日間でネブラスカ、ユタ、コロラド、ウィスコンシン、アラスカの計5州の知事と会った。
同時期に全国知事会も訪米団を組み、鳥取県の平井伸治知事が同月24日にあった全米知事会総会の開会式に出席。平井知事は朝日新聞の取材に対し、「全米知事会に『日米知事フォーラム』の開催を提案し、『ぜひ、やりましょう』となった。大きな一歩だ。夏から秋にかけて開くよう準備に入りたい」と成果を強調した。
日米知事会議は1962年に始まり、日米の知事が諸問題を協議する場だったが、95年を最後に途絶えた。一時は日米貿易摩擦を解消するために理解を深める意義を持った。が、摩擦がなくなるとともに、会議も役割を失った。
安倍政権と全国知事会は今夏にも、この会議を「フォーラム」という形で復活させる考えだ。
なぜ今、知事レベルの関係強化を進めるのか。背中を押したのは、トランプ大統領の誕生だ。「米国第一」を掲げるトランプ氏は大統領選中、「日本がネブラスカの牛肉に38%の関税をかけるなら、日本の車にも関税38%をかける」などと、日本との貿易赤字の問題をやり玉に挙げていた。
トランプ政権は3月23日、安全保障を理由に、鉄鋼の輸入品に25%、アルミ製品には10%の関税をかけるという措置を発動。日本は対象から除外されなかった。さらにトランプ政権は北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉も進める。メキシコで組み立てた車を米国に輸出する日本企業にとって大きな関心事だ。
平井氏は「NAFTAなど非常に不安定感がある中、日米の知事レベルでも何が出来るのか、正面から議論するようになったのはトランプ政権の影響がある」と指摘する。
トランプ氏と安倍首相は良好な関係を構築しているとされる。それでも、トランプ氏は何をするか読み切れない予測不可能性を外交カードにする。日本側が警戒感を示していた米朝間の対話を決断した。日米間で乱れた足並みを再びそろえるため、安倍首相は4月に急きょ訪米してトランプ氏と会談する。
日本側がめざすのは、トランプ氏が日本との貿易を問題視した際、日本に理解を示してくれる州知事をつくることだ。その好例として日本側が挙げるのが、ペンス副大統領。日米の経済関係に関する対話の窓口役であるペンス氏は日本企業が多く進出するインディアナ州の知事だった。日本政府高官は「将来、ペンス氏のような存在になる人材と、自治体や企業など草の根レベルで関係を作っておくことが大事だ」と話す。
■日本、各国に比べ後…