安倍晋三首相
【特集】ファクトチェック
証人喚問のやりとりにコメントしないのが政府の一貫した立場です(3月28日、参院予算委員会で)
→×(間違い)
財務省が森友学園との国有地取引に関する決裁文書を改ざんした問題で、同省の佐川宣寿(のぶひさ)・前理財局長に対する証人喚問が行われた翌日の参院予算委員会。民進党の川合孝典議員の「証言についてどう感じたか」という質問に答えた。
首相は佐川氏の証言について「コメントしない」と繰り返し、論評を避け続けた。さらに「政府は論評をずっと控えている」とも強調。論評しないことが政府としての「慣例」であるかのような発言もあった。
しかし、コメントしないのが政府の一貫した立場というのは間違い。安倍首相自身、証人喚問の内容について論評したことがある。
森友学園の籠池泰典理事長(当時)の証人喚問があった翌日の昨年3月24日の参院予算委員会でのことだ。首相は「刑事訴追のおそれを理由とした証言拒否が繰り返され、真相が解明されず、大変残念だった」と指摘。籠池氏の証言内容についても「悪意に満ちたものだ」と批判した。
また、麻生太郎財務相は佐川氏の証人喚問の後の今年3月28日、「彼は自分の刑事訴追に関係ない分については、はっきり言っていたと思う」と記者団に語った。ただ、「証人喚問に関してコメントは政府はしないとずっと一貫されてきていると思う。(自分は)少々しゃべりすぎたと反省している」とも付け加えた。
歴代の首相はどうか。1988年にリクルート事件をめぐる証人喚問では、当時の竹下登首相は衆院本会議で「論評は差し控えるべきだ」と答弁した。一方、証人喚問での証言内容を否定した首相もいる。
2007年に行われた証人喚問で、元防衛事務次官が軍需専門商社から受けた接待の場に政治家がいたと明かしたのに対し、福田康夫氏は「『接待を受けたことはない』という報告があった」と記者団に語った。
02年の「政治とカネ」をめぐる鈴木宗男・元衆院議員に対する証人喚問については、小泉純一郎氏が後日、参院予算委で「いろいろ証言をされていたが、個人の問題というだけでなく、建設的に政治改革に生かしたい」と発言。証言そのものへの評価を避けながら、自らの改革姿勢のアピールに努めた。(斉藤太郎)