エアプサンの機体=同社提供
韓国の格安航空会社(LCC)「エアプサン」は4日、中部空港に6月から初めて就航すると発表した。関西や首都圏などと比べてLCCの割合が低かった中部でも、競争がいよいよ激化してきた。
「今まではレジャーが中心だったが、中部地方には工業もあり、ビジネス客を取り込むことで新しいマーケットが開拓できる」
4日、中部空港で会見した原野卓郎エアプサン名古屋支店長は、就航を決めた理由を語った。これまで福岡と関西、成田、新千歳に就航していたが、中部に路線はなかった。同社は6月21日から中部―釜山を毎日1往復させる。今月10日まで、就航を記念して片道3千円のキャンペーン価格でチケットを販売する。
LCCによる中部強化の流れは、昨年後半ごろから急速に強まってきた。
本拠を中部に構えるエアアジア・ジャパンは昨年10月、中部での運航を始め、路線の強化を急いでいる。ライバルのジェットスター・ジャパンも3月下旬に中部を拠点化。夜間に機体を置くことで早朝と深夜を含めた柔軟なダイヤづくりができるようになった。路線拡大の第1弾として4月28日から6月30日まで、中部から福岡、那覇、鹿児島への路線を土日祝日を中心に1日1往復ずつ増やす。
世界で利用が伸びているLCCは、2007年に国内に初上陸。それを受け入れる空港同士の競争も厳しくなった。関西と成田は、簡素な設備で利用料を抑えたLCC専用ターミナルを早期につくり、LCCの取り込みに成功した。
一方、出遅れた中部は就航便におけるLCCのシェアが13%ほどにとどまる。LCC各社は競争が中部にも波及するとみて、一気に拡大に乗り出した。エアアジア・ジャパンの谷本龍哉会長は「LCCのシェアが非常に低い中部に市場拡大のチャンスがある」。
利用者を増やしたい中部空港は、LCC拡充により魅力アップをめざす。
中部は成田、関西に次ぐ第3の国際拠点空港として05年開港したが、旅客数は開港当初の1235万人を上回っていない。LCCをうまく取り込めていないことが要因の一つだ。LCC誘致に向け、空港を運営する中部空港会社は19年完成を目標に専用ターミナルをつくる。
日本でもこの数年で急速にLCCの競争が激化し、国内系のピーチ・アビエーションとバニラ・エアは、19年度末をめどに経営統合する方針を決めた。拠点化で中部に一層力を入れ始めたジェットスターの片岡優社長は「ピーチもバニラも運航していない中部で、路線ネットワークをしっかり構築したい」と意気込む。(友田雄大)
中部はほかの国際拠点空港よりLCC比率が低い
関西 成田 中部
国内線 53.7 70.8 11.9
国際線 38.7 19.1 15.2
合 計 42.9 30.6 13.1
※単位は%。中部空港会社調べ。18年夏ダイヤで、各空港の便に占めるLCCの割合
中部空港に就航しているLCC
【航空会社】 【就航都市】
◇国内線 エアアジア・ジャパン 札幌
ジェットスター・ジャパン 札幌、福岡、鹿児島、沖縄
◇国際線 エアアジア・ジャパン 台北(台湾・計画中)
ジャットスター・ジャパン 台北、マニラ(フィリピン)
タイガーエア台湾 台北
チェジュ航空 ソウル(韓国)
春秋航空 上海、寧波(中国)
香港エクスプレス 香港
セブパシフィック航空 マニラ
エアプサン 釜山(韓国)※6月21日から