東京電力柏崎刈羽原発と新潟県知事をめぐる動き
新潟県の米山隆一知事(50)の辞職表明を受け、東京電力柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働について、関係者の間には不安と期待が交錯する。
米山隆一新潟知事が辞職表明 女性問題「信頼裏切った」
記者会見での主なやりとり
柏崎刈羽6、7号機は昨年12月に原子力規制委員会で新規制基準への適合が認められ、再稼働の焦点は地元同意に移っている。東電は最速で2019年度からの再稼働を目指すが、米山氏は県独自の福島事故の検証などを終えるまで地元同意の判断をしない方針を示していた。
柏崎刈羽原発が立地する柏崎市の桜井雅浩市長(55)は、県が進める検証について「原子力規制委で優秀な専門家が審議を重ね、合格の結論を出した。年数回の会合で県独自の判断を下すのは無理がある」とし、新知事には「再稼働の議論を早期に始めるよう求める」という。市内で設備メンテナンス会社を経営する徳間昭則さん(61)は、原発部門で約150人を雇う。「再稼働論議を棚上げしたままで実りのない時間ばかりが過ぎた。次のステージに進まないと、冷え込んだ経済は浮揚しない」
一方、柏崎市の脱原発グループメンバーの一人、保健師の竹内英子さん(48)は「原発の安全を検証する枠組みを拡充し、市民との対話にも積極的だった。住民自身が原発の是非をしっかり考えるための環境を整えてくれた人が、プライベートの問題で辞めざるをえなくなったのはとても残念」。福島県南相馬市から新潟に避難し、高校3年の次男と暮らす主婦の杉由美子さん(49)は「検証を引き継いでくれる人はいるんだろうか。また同じ不安を抱えなければいけないのか」と話した。
東京の市民団体「再稼働阻止全国ネットワーク」の柳田真・共同代表(78)は、次の知事の考え次第で「再稼働が大幅に前倒しされるのでは」と危機感を募らせる。「米山氏の路線を引き継ぐ人に立候補してほしい」
原発を所管する経済産業省からは「(知事選の)結果次第で前に進む可能性はある」(幹部)との見方もあるが、「まだ候補者も決まっていないし、どう転ぶかわからない」(別の幹部)との声も。東電にとって、収益改善となる原発の再稼働は経営再建の柱。東電関係者は「知事は原発再稼働を慎重に検証していたが、決して否定論者ではなかった。次の知事の考え方にもよるが、これで再稼働が進むとは言い切れないのではないか」と話す。