強制不妊手術を受けたと告白した小島喜久夫さん=2018年4月18日午後、札幌市、白井伸洋撮影
旧優生保護法(1948~96年)のもと、不妊手術を強制されたとして、国に損害賠償を求めて札幌地裁に提訴する予定の札幌市の70代男性が名前を明かして、朝日新聞の取材に応じた。強制不妊手術をめぐる国賠訴訟で実名を公表した原告や提訴予定者は初めて。男性は「自分が実名を出すことで、まだ声を上げられない人にも立ち上がってほしい」と話す。
強制不妊手術、執拗に説得 拒む親は「無知と盲愛」
男性は同市北区の小島喜久夫さん(76)。小島さんによると、生後間もなく農家に養子として引き取られた。10代後半、家族との関係が悪化し、生活がすさんで非行に走った。そのころ、無理やり精神科病院へ連れて行かれ、入院させられた。病院では「精神分裂病(のちに統合失調症と改称)」を理由として、19歳で不妊手術を受けさせられたという。
旧優生保護法は、遺伝性疾患や、遺伝性ではない精神疾患や知的障害のある人について、医師が申請し、審査会の決定などを条件に不妊手術の実施を認めていた。しかし、小島さんは「医師の診察を受けずに『精神分裂病』とされた。幼い頃に小児まひにかかったが、遺伝性の病気ではない」と話している。
強制不妊手術をめぐっては今年1月、宮城県の60代女性が国を相手取って全国で初めて提訴。小島さんも近く札幌地裁へ提訴を予定している。小島さんは「国に人生を狂わされ、国には謝罪してほしい。自分のように苦しんでいる人はたくさんいると思う。自分一人の問題ではない」と話している。
国の統計によると、手術を受けた人は全国で少なくとも1万6475人で、うち北海道は2593人を占め全国最多とされる。道の調査では1314人分の氏名を特定している。(布田一樹、磯部征紀)
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