故・有園博子さん(ひょうごコミュニティ財団提供)
JR宝塚線(福知山線)脱線事故遺族らの心のケアを担った兵庫教育大教授の有園博子さんが昨年12月、がんのため57歳で亡くなった。事故の遺族や犯罪被害者らを支える団体・研究者を支援したいとの遺志と遺産約9千万円をもとに、近く基金が設立される。
【特集】JR宝塚線脱線事故
有園さんは兵庫県こころのケアセンター(神戸市)の主任研究員を経て、2007年から兵庫教育大に勤務。教壇に立つ傍ら、臨床心理士として脱線事故の遺族や家庭内暴力(DV)、性暴力の被害者らのカウンセリングをしてきた。
16年秋から闘病を続け、遺産の活用を弁護士らに相談。「人が人としての権利、自由を尊重される社会になってほしい」と、ひょうごコミュニティ財団(神戸市)に基金設立を打診していた。
脱線事故の被害者を支援する「思いをつなぐ連絡会」の津久井進弁護士は「大変な境遇や深い傷を負った人にこそ、自分は必要とされていると考え、寄り添う姿勢には頭が下がる思いだった」と話す。
有園さんの姉の阿部順子さんは「姉は弱者にこそ社会の光を当てるべきだと支援を続けていた。基金によって妹のような研究者が生まれてほしい」と話した。(川田惇史)