薬局の花粉症対策のコーナー=名古屋市中区のスギ薬局伏見店
花粉症に悩む人にとって今シーズンは例年よりつらかった? 日本気象協会などによると、今季はスギやヒノキの花粉の飛散量が多かったという。愛知県ではピーク時で前年の数倍の量を記録。花粉量はここ数年、低調だったといい、急増した理由は専門家も「わからない」と首をひねっている。
日本気象協会によると、今季は全国的に花粉の飛散量が多く、特にヒノキ花粉が目立って多かったという。愛知県豊明市の藤田保健衛生大学は飛散量の観測データを気象協会に提供している。大学の観測によると、スギ花粉の飛散数はピーク日(3月5日)で1平方センチあたり365個。前年ピーク日は187個で、今年は1・95倍にあたる。
スギより遅れて飛散するヒノキ花粉もピーク日(4月3日)には1平方センチあたり222個が観測された。前年ピーク日(66個)と比べ3・36倍の量だった。
藤田保健衛生大の村嶋智明助教(耳鼻咽喉(いんこう)科)は「最近はスギ、ヒノキの古木化が原因で、2011年をピークに花粉量は低調だった。研究者の間では、今季は例年並みと予測していたのだが……」と話す。診察した患者の中には「久しぶりに花粉症の症状が出た」と訴える人もいたという。
「今年初めは雪が多く、『雪で花粉が落ちるので飛散量は減るのでは』と言われていた。予想に反して多かった原因を今後分析したい」と村嶋助教は話す。
花粉の飛散増は経済的な影響も与えた。
「愛知県内で花粉が飛び始めた3月ごろから、対策商品が急激に売れ出した。売り上げは絶好調です」
愛知県大府市に本社があるドラッグストアチェーン「スギ薬局」広報室の迫西克行さん(37)は話す。中部エリア(東海3県や静岡、滋賀県の一部)の既存店では、マスクの売上額は前年の1・12倍。特に60枚と大量の箱入り商品が売れたという。
鼻炎薬も前年の1・3倍売れた。特に医療機関で処方される薬と同様の成分が入った、効き目の強い薬が人気だった。シーズン初めは需要に追いつかず、薬が欠品する店舗も相次いだという。
日本気象協会によると、東海地方ではスギ花粉の飛散はすでに終息したという。ヒノキ花粉も今月いっぱいで飛散が終わると予想している。(日高奈緒)