マングローブ原生林=2018年4月19日午前、鹿児島・奄美大島、朝日新聞社機から、堀英治撮影
国内5例目の世界自然遺産を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」(鹿児島、沖縄両県)は、今年の登録が厳しい状況になった。ユネスコ(国連教育科学文化機関)世界遺産委員会の諮問機関・国際自然保護連合(IUCN)が「登録延期」の勧告を出したためだ。なぜ、価値が認められなかったのか。
4日未明に開かれた環境省の記者会見。奥田直久・自然環境計画課長は「自信をもって推薦したが、どこにギャップがあったのか勧告を分析したい」と話した。
「奄美・沖縄」は九州南端から台湾の間の約1200キロに点在する琉球列島のうち、鹿児島県の奄美大島と徳之島、沖縄県の沖縄本島北部と西表島の4島が対象だ。
政府は、アジア大陸から切り離された後に取り残された生物が独自の進化を遂げた「生態系」、西表島だけにすむイリオモテヤマネコなど希少な生きものの宝庫としての「生物多様性」の2点で普遍的価値があるとして推薦したが、IUCNはその価値に疑義を示した。
環境省によると、IUCNは「生態系」について、推薦された約3万8千ヘクタールの地域が24区域に分断されていることに懸念を示した。奄美大島や沖縄本島北部では対象地域が飛び地状に点在していたり、100ヘクタール以下の小さな区域が全体の半数以上を占めていたりすることで、生態系の「持続可能性に重大な懸念がある」と評価した。
一方、「生物多様性」については絶滅危惧種や固有種が多いことを評価した。沖縄本島北部で米軍北部訓練場の返還部分を対象に加えるなど全体的な区域の見直しや再構成をすれば、「評価基準に合致する可能性がある」とした。
最終的な登録の可否は、6月24日からバーレーンである世界遺産委員会で決まる。文化遺産では2007年に「登録延期」を勧告された石見銀山(島根県)が一転登録された例もある。(川村剛志、杉本崇)