大阪市役所前で過ごす茶毛交じりの黒猫=2018年4月25日午後、大阪市北区中之島1丁目、吉川喬撮影
大阪・中之島の大阪市役所前で暮らす2匹の黒猫がいる。オフィス街の片隅で悠々自適に過ごす姿に、道行く人々がエサや雨よけの傘を差し入れる。隣接する図書館では2年前からグッズが売られ、ツイッターでも話題になっている。
4月の午後、市役所前の植え込みで、白毛交じりの黒猫が仰向けになって昼寝をしていた。近くに一回り小さな茶毛交じりの黒猫がちょこんと座る。青空のもと、白毛交じりが起き上がって大あくび。通りかかった人から笑みがもれた。
オスとみられる白毛交じりは、人が近づいても逃げない、動じない性格。メスとみられる茶毛交じりはナオナオとよく鳴き、なでられると気持ちよさそうに目を細める。市役所南側の階段の隅でよく寝ている。
2匹は散歩中の人や通勤する人たちからエサをもらう。植え込みのブロックに腰掛けているサラリーマンのひざに乗り、昼寝を始めることもある。雨が降ると、差し入れの傘の下で雨宿り。写真を撮られることも多いが、人だかりができると迷惑そうに立ち去る。
「神々しいほど堂々とした猫がいた」
「市役所界隈(かいわい)の主かも知れない」
ツイッターでも話題を呼んでいる。
共通の呼び名はないようだ。「黒猫せんぱい」と呼ぶ人もいれば、「ルナ様」と呼ぶ人もいる。
いつからすみ着いているかはわからない。7年前のツイートに「大阪市役所の近くにいる野良の黒猫、通称『黒』は実は二匹いることが今日判明」とあるが、同じ猫かは不明だ。
10年前から通う60代の主婦によると、以前から近辺には黒猫を含めて複数の猫がいたが、同じ黒猫かはわからない。いまの2匹は、「悠々自適な姿がかわいい。慣れると甘えてくるツンデレな性格も好み」。
市役所の隣の大阪府立中之島図書館には、2匹にちなんで、黒猫をあしらったマグカップやキーホルダーなど40種のグッズが並ぶ。販売するアスウェル(大阪府羽曳野市)によると、みんなに愛される様子から、同社が図書館の指定管理者となった2016年4月から販売を始めた。
図書館コンシェルジュの森本聖子さん(39)は、仕事帰りに2匹を見るのが楽しみだ。夜更けの暗い市役所を背に、2匹が階段の上から目の前の土佐堀川を眺めていることもある。
「エサをあげたり、なでたりするわけではないけど何となく気になる。数日見かけないと、何かあったのかと心配になる。気づけばアイドルのとりこです」(吉川喬)
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環境省によると、野良猫へのエサやりは法律で禁止されていないが、和歌山県や京都市は条例で「周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼすような給餌(きゅうじ)を行ってはならない」などと定めている。大阪市動物管理センターは「余ったエサを片づけるなど処理を適切にして、地域から苦情が出ないようにしてほしい」と呼びかけている。