北朝鮮に拘束され、ポンペオ米国務長官の訪朝にあわせて9日に解放された米国人3人は、全員が韓国系の米国人だった。うち2人は平壌科学技術大学の関係者だった。
北朝鮮は「隠者の王国」とも呼ばれ、関心を持つ外国人も多い。韓国の統一研究院などによれば、2012年時点で観光に訪れたのは中国人が年5万~6万人と最も多く、そのほかは数千人ほどだった。
うち米国人は年500~800人ほど。約1年半拘束された米バージニア大学生オットー・ワームビア氏が17年6月、解放直後に死亡すると米政府は米国人の渡航を原則禁じた。北朝鮮はこの後、朝鮮語が話せず、文化の違いも大きい米国人の抑留に慎重になったとみられる。
9日に解放された3人は韓国系のため朝鮮語を理解する。北朝鮮側は、長期間の拘束に耐えられると判断したようだ。うち2人は平壌科技大の教授と運営関係者。この大学は南北協力事業の一環として設立準備が進み、10年10月に本格的に運営を始めた。「電子コンピューター工学」「国際金融・経営」「農業・生命科学」の3学部があり、学部生約300人と大学院生約70人が学んでいるという。
資金は、欧米に住む韓国系の人たちがキリスト教団体などを通じて寄付。運営にも韓国系の米国人が携わるようになった。ただ、北朝鮮当局は、朝鮮語を理解するため情報流出にも敏感になっていたようだ。(ソウル=牧野愛博)