前半、フランスの選手をマークするコーネリウス(21)らデンマークの選手たち=関田航撮影
曺貴裁の目(J1湘南監督)
(26日、デンマーク0―0フランス サッカー・ワールドカップ)
デンマークにとっては、決勝トーナメント進出をかけた一戦。負ければ1次リーグ敗退の可能性があったため、リスクを冒さない試合運びを見せた。スコアレスドローの結果に、多くの人は「退屈な試合だ」と思っただろう。しかし、サッカーの指導者としては、非常に勉強になった試合だった。
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サッカーに正解のやり方なんて、ない。デンマークは、最低でも引き分けるために11人全員が一体感を持ってプレーした。ボールにいく人、カバーにいく人が徹底されていて、声を出す必要もないくらい。守備ライン4人とMFの距離感も素晴らしかった。カウンター攻撃からシュートを1本も打たせなかったのは見事。相手に隙を突かせず、自らも隙を作らない。監督、スタッフの意図をくみ取って、それを完全に遂行する選手たち。「一体感のない戦術は無意味だ」ということを改めて感じさせられた。
11人の意識を統一させることは、難しい。勝ちだけを狙うのではなく、引き分けを含んだ戦い方を選択したなら、なおさらのことだ。必要なのは選手を理解させるのではなく、納得させること。その方法は様々で、私はミーティングで恋愛映画やパン屋のドキュメンタリー映像を使って、意思統一を図ったこともある。選手が言われたことを積極的にやるか、消極的にやるかで結果は全然違う。その部分で、やりきったデンマークは素晴らしかった。
加えて、レフェリーのジャッジにも一貫性があって、ゲームの流れが止まることはなかった。本当にハイレベルな試合だった。(J1湘南監督・曺貴裁)