トライを決めるパーカー=19日、香港、益満雄一郎撮影
世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」(SR)に参戦3年目となる日本のサンウルブズが19日、SR初開催となった香港でストーマーズ(南アフリカ)に26―23で劇的な逆転勝ちを収め、チーム史上初の2連勝を達成した。最高気温が33度を超える酷暑のなか、SOパーカーの「サヨナラドロップゴール(DG)」で熱戦に決着。試合後、興奮したファンがグラウンドになだれ込み、選手を祝福するなど香港ならではの一体感も感じさせた好ゲームだった。
「太陽狼隊」VS「風暴人隊」――。試合のプログラムの表紙には両チームの中国語名も書かれていた。サンは「太陽」、ウルブズは「狼」という意味の英語だが、漢字で表記すると、英語以上にチーム名が持つメッセージが伝わってくる。だが、相手も荒々しさでは負けていない。「嵐」を意味するストームに「人」を加えたチーム名。名前の通り、屈強な巨漢をそろえたチームだった。
前半苦戦も、試合終了間際に…
前半、サンウルブズは苦戦を強いられた。スクラムで反則をとられ、ボール争奪戦でも強い圧力を受けた。前半は10―17と相手リードで折り返した。後半は一進一退の展開のまま、23―23の同点で試合終了直前を迎えた。
ストーマーズは敵陣に攻め込むと、ボールを奪われるリスクの少ないFW戦を繰り返した。密集でサンウルブズの反則を誘い、ペナルティーゴール(PG)で勝利を狙う意図が明らかだった。だが、サンウルブズは規律を守り、反則をしないようにタックルを繰り返す。途中出場のHOブレグバゼが密集で値千金のボール奪取。劇的な勝利を呼び込む起点をつくった。
プレーが途切れれば、試合が終わるため、絶対に失敗は許されない場面で、俊足のWTB福岡が味方のキックパスを見事に捕球。一気に敵陣に入ると、22メートルライン中央付近の密集から出たボールをSH流がパーカーへパス。DGを狙っていたというパーカーが利き足ではない右足で無心に蹴ると、低い弾道のボールはポストを越え、ノーサイドの笛が鳴った。
香港初のSRの試合に観客興奮
アジア唯一のSRチームとしてサンウルブズを応援してきた香港のファンは試合後、グラウンドに入り、選手たちと握手をしたり、記念撮影したりして、香港初のSRの試合を楽しんだ。日本では観客がグラウンドに入ることはないが、香港では珍しくない光景だ。
試合後の記者会見で、ストーマーズのフレックヘッドコーチ(HC)は「自信を持って、素晴らしいプレーをした」とサンウルブズをたたえた。ストーマーズは今季、混戦となっている南ア地区で最下位とはいえ、5勝をあげている。
そんな地力のあるチームを相手に、サンウルブズが競り勝った意義は大きい。今季は前節まで1試合平均40点近い大量失点を献上していたが、この日は23失点にとどめた。守りが機能すれば、勝利を呼び込める攻撃力があることを証明した。「右足でいくしかなく、やってやろうという気持ちだった。新しい歴史をつくる意気込みで挑んだ結果が出た」。試合を決めたパーカーは胸を張った。(益満雄一郎)