延長で相手ゴール下に攻め込む三河・狩俣④=吉本美奈子撮影
今季も優勝を逃した。男子プロバスケットボール・Bリーグのチャンピオンシップ(CS)でシーホース三河が、昨年に続き準決勝で敗退した。日本代表のエース比江島ら有力選手がそろい、前身は何度も優勝を飾った強豪のアイシン。だが、Bリーグとなってから2シーズン、タイトルに届きそうで届かない。
アルバルク東京との準決勝。大きな分かれ目となったのは、5月19日の第1戦、試合の残り1分を切ってから決められた同点の3点シュートだ。
11点リードで迎えた第4クオーター(Q)、追い上げられた三河はディフェンスのギアが上がった。59―58で相手の攻撃を守り切ったPG橋本からガッツポーズが出た。その後、リーグ屈指のスコアラー金丸がフリースロー2本を決めて3点差。計時は1分7秒。だがここから、東京のPG安藤に3点シュートを決められ、延長で敗れた。
延長で放った3点シュートは…
第2戦は逆に、比江島が土壇場で同点の3点シュートを決めた。残り10秒を切ってからのビッグショットでウィングアリーナ刈谷の観客席は総立ちに。ホームの大声援の後押しを受けて入った延長、終了間際、2点差を追って比江島が放った3点シュートはリングに当たってはじかれた。
比江島は「あそこは2点でもよかった」と振り返った。確実に追いつき、再延長で勝って第3戦に持ち込む考えもあった。しかし、「これ以上延長になったら第3戦で勝てない」と思っての選択だった。
三河は第1戦の延長で、主力にプレー時間が集中して「足にきていた」(橋本)。東京は新ヘッドコーチ(HC)の下で年間を通して体力強化に取り組み、選手のプレー時間も分散していて、動きで上回っていた。「勝ちゲームだった」(比江島)という第1戦を、相手の好ショットから落としたつけが回ってきた。
負けないと、士気高まらない
昨季のCS準決勝。栃木との第3戦で、残り30秒の2点リードから逆転された。Bリーグ2季目はこの悔しさからスタート。補強や戦術などコート上の強化はもちろん、CSを有利に戦うことを見据えてレギュラーシーズンの全体勝率1位でホーム開催権も目指した。60試合の中で16連勝と17連勝をし、同一チームに連敗はしない勝ちっぷりで早々に中地区1位を決め、全体1位。1試合平均84・6点もリーグ1位だった。
企業チームとして創部されたのは1947年。95年に日本リーグ2部だったアイシン精機のHCとなってから24季目の鈴木貴美一HCは「企業チームで、観客は社員の方や招待者が多かった。今季はお金を払って応援に来てくれるファンが増え、それに応えなければと成長できた」という。チームカラーから「声援」を「青援」とし、収容数の多い豊田市での開催では5千人を超す観客を集めた。
愛知県刈谷市のアイシン精機体育館の玄関には古いトロフィーが飾ってある。天皇杯全日本総合は02年から9度優勝。リーグ優勝は6度。今季は天皇杯で準優勝。今度こそと挑んだリーグは、CS準々決勝で栃木にリベンジして着々と進んできたが、届かなかった。
シーズン中、鈴木HCは話していた。「何回も勝ったことがあるチームは、負けないと、士気が高まっていかないところがある」。リーダー的存在の橋本は「反省し、課題を挙げて、来季に臨むことが必要。バスケットボールに終わりはない。もっと突き詰めて、うまくなりたい」。強豪のタイトルへの渇望がさらに強くなった。(松本行弘)