イスラエル建国で故郷を追われたパレスチナ人と村跡地の写真を見るイスラエル人の来訪者=2018年5月17日、イスラエル中部テルアビブ、渡辺丘撮影
イスラエル建国でパレスチナ人約70万人が難民になった「ナクバ」(アラビア語で大破局の意味)から70年。長年、パレスチナ問題を追い続けてきたフォトジャーナリストの広河隆一さん(74)の写真展が17日、イスラエルの商都テルアビブで始まった。同国での写真展は半世紀ぶり。
広河さんは1967年にイスラエルのキブツ(集団農場)で暮らした。「理想社会」の近くの廃虚がイスラエル建国で追われたパレスチナ人の村跡地と知り、衝撃を覚えた。村跡地を訪ね歩き、パレスチナ難民の撮影を続け、2008年には自身が監督した映画「パレスチナ1948・NAKBA」を公開した。
パレスチナ問題に関わって半世紀の区切りとしてイスラエルでの写真展の開催を希望し、イスラエル人の有志が協力して実現した。パレスチナのほか、チェルノブイリや福島の原発事故で消えた村の写真など80点以上を展示している。
広河さんは「ユダヤ人とパレスチナ人の争いの原点はナクバにある。安全が何より重視される国で、人々の記憶から消える問題をユダヤ人に考えてほしい」。会場の芸術学校長のオデッド・イェダヤさん(69)も「重い内容だが、若者たちに生まれる前の歴史を知ってもらいたい」と話す。
米大使館のエルサレム移転への抗議デモでは60人超が犠牲になった。「イスラエルも米国も挑発を繰り返して事態を悪化させ、歯止めが利かなくなっている。緊張を広げるのではなく、どうにか解決の糸口を探ってほしい」。広河さんはそう願っている。(テルアビブ=渡辺丘)