イラク日報問題での防衛省関係者の処分
「依頼が不明確」「上司に相談せず不適切」「意思疎通が不十分」――。陸上自衛隊のイラク派遣時の日報をめぐる調査報告書で統制のまずさを指摘された防衛省・自衛隊。幹部らはどう受け止めたのか。問題の本質はどこにあるのか。
特集 イラク日報問題
日報探し、あいまいなメールで指示…大臣と組織に深い溝
「あちこちに不手際があった」。2カ月近くを要した調査を受け、防衛省幹部はそう感想を述べた。
文書を探す範囲が狭すぎたり、担当者だけで済ませたり……。調査報告書が指摘した問題の背景に、情報公開に消極的な組織の姿勢がにじむ。この点、ある幹部は「軍事的な組織としての本能みたいなもの」と明かす。
実際、防衛省には「秘密」が多い。特定秘密保護法の施行以来、指定された特定秘密517件の情報のうち、302件が防衛省だ。「特定秘密でなかろうと、なるべく情報は出さない方が国の安全、隊員の安全のためになる。情報を出して損をすることはあっても得することはないという感覚がある」という。
情報公開を「300円テロ」と揶揄(やゆ)する声すら聞こえる。1件につき300円でできる情報公開請求によって、業務負担が増えることへの「被害者意識」だ。
そんな後ろ向きな姿勢が、文書管理の実務にも表れる。公開することを意識していないため、統一的な管理のルールがなく、保管場所もその時々の担当者任せ。日報の探索では、ファイル名が「日報」「活動報告」「教訓業務各種資料」など様々で見つけられなかったケースや、「共有フォルダー」の中の「個人ファイル」として埋もれていたケースがあった。
今月には、政府のウェブサイトで公開されている文書にも「自分たちだけ分かればいい」と分かりづらい文書名を付けていたことが批判を受け、小野寺五典大臣が改善の表明を余儀なくされた。
統合幕僚監部の幹部は「実力組織がこんな体たらくで大丈夫かという疑念はよく分かる。国民への向き合い方が問われている」と語った。(古城博隆)
■日報 軽く扱っ…