過去に特殊な登記方法が使われたために所有者が分からなくなっている土地について、法務省は、法務局の登記官に所有者を特定するための調査権限を与える方向で検討を始めた。上川陽子法相が1日、明らかにした。これまでは公共事業を担う自治体などが特定していたが、その費用や労力を減らして土地の有効利用を促すのが狙いで、来年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。
対象となるのは、登記簿に所有者個人を特定するための情報が記されていない「変則型登記」の土地。昔の土地台帳の情報をそのまま登記簿に転記したため、かつての集落の名称や、複数の所有者のうちの代表者の名前しか書かれていない。こうした土地が全国にどのくらい存在するかは、同省も把握できていない。
これまで自治体は再開発などのためにこうした土地を買収する際、集落に関わる歴史的文献の調査や地域の人への聞き取りによって所有者を調べていた。しかし、特定するまでに多大な費用や労力を費やすほか、特定できずに終わり、再開発を断念せざるを得ない事例もあったという。
そこで法務省は、所有者の許可がなくても、登記官が戸籍や固定資産課税台帳などを閲覧し、所有者の情報を調べて登記簿に反映できるようにする方向で検討を始めた。登記官はこれまで原則、土地の譲渡などがあったときに、申請内容に基づいて登記簿上の情報を書き換える権限しかなかった。(浦野直樹)