米ホワイトハウスは19日、中国による知的財産侵害に関する報告書を公表した。中国の知財侵害を理由とした高関税措置を発表し、対中通商摩擦を激化させているさなかに、改めて政権の立場を正当化する狙いだ。
報告書は中国の知財侵害について、①サイバー攻撃などによる技術や知財の窃盗②威圧的な外資規制③原材料の輸出規制を通じた経済的支配④在米中国人による情報収集⑤中国政府が後ろ盾になった米企業の買収――などに分類。「中国経済の大きさや市場をゆがめる政策の規模、次世代産業を支配しようとの意図を考えれば、中国の攻撃は米国経済だけでなく、世界で技術革新を生む仕組み全体を脅かす」と指摘している。
トランプ大統領は18日、米国の高関税措置に報復を表明した中国に反発し、2千億ドル(約22兆円)分の輸入品に10%の関税を上乗せする案の検討を表明。報告書の公表を主導したナバロ通商製造業政策局長(大統領補佐官)は19日午前の電話会見で「トランプ大統領は中国に攻撃的行動を改める機会を幾度も与えてきた。その努力にもかかわらず、何の進歩もみせなかった」と中国を非難した。
トランプ政権は、「通商法301条」に基づき、関税などの措置をかける大統領令にトランプ氏が署名した3月、中国の知財侵害について詳細な報告書を公表している。本格的な通商紛争の瀬戸際に立ったこの時期に改めて報告書を発表することで、対中圧力を強めようとする意図がうかがえる。
トランプ氏は現在の局面では、中国との妥協を模索してきた融和派のムニューシン財務長官ではなく、対中強硬派のナバロ氏やライトハイザー通商代表を重用している。ムニューシン氏と対立するナバロ氏が、政権内での自らの正当性を主張する狙いもありそうだ。(ワシントン=青山直篤)