マレーシアのナジブ前首相=2018年5月9日
マレーシアの汚職防止委員会(MACC)は3日、ナジブ前首相を逮捕した。政府系ファンド「1MDB」関連の資金を不正流用した容疑とみられる。5月の総選挙で同国初の政権交代を実現したマハティール首相は疑惑を追及する考えを表明し、首相就任直後にナジブ氏と妻のロスマ氏を出国禁止にし、捜査を進めていた。
1MDBはナジブ氏が首相在任中に主導して設立した政府系ファンド。13年、同ファンドから関連会社を通じてナジブ氏の口座に約7億ドル(約777億円)が不正に入金された疑いがある。このうち、MACCは5月、1MDBの元子会社SRCインターナショナルからナジブ氏の口座に4200万リンギ(約12億円)が振り込まれたことが汚職に当たるとみてナジブ氏を聴取していた。
ナジブ氏の義理の息子らが蓄財のためファンドの資金を使って米国などの不動産やゴッホやモネの絵などの美術品、レオナルド・ディカプリオさん主演の米映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」関連の興行収入の権利なども購入したとも報じられている。
同ファンドの資金の流れについては、米国のほか、スイスやシンガポールなどの捜査当局も汚職や資金洗浄の疑いで調査中だ。だが、マレーシアではナジブ政権下の2016年に司法長官が捜査の打ち切りを表明していた。
マレーシア警察当局はクアラルンプール市内にあるナジブ氏の自宅や首相官邸などを捜索。6月末までに、現金1億1600万リンギ(約32億円)、ネックレスや腕輪などの宝飾品1万2千個、高級腕時計423個、ハンドバッグ567個など総額約10億リンギ(約274億円)相当を押収したと発表した。(シンガポール=守真弓)