工藤会総裁の野村悟被告宅を捜索する捜査員ら。入り口では機動隊が警戒にあたった=2014年9月11日午前7時24分、北九州市小倉北区、朝日新聞社ヘリから
指定暴力団工藤会(北九州市)の「上納金」をめぐる脱税事件で、所得税法違反の罪に問われた工藤会トップで総裁の野村悟被告(71)に対する判決公判が18日、福岡地裁であった。足立勉裁判長は、野村被告に懲役3年、罰金8千万円(求刑懲役4年、罰金1億円)を言い渡した。
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工藤会幹部の山中政吉被告(67)も、懲役2年6カ月(求刑懲役3年6カ月)の判決を受けた。福岡県警が工藤会壊滅をめざして2014年9月に着手した「頂上作戦」以降、野村被告に対する判決は初めて。
起訴状によると、野村被告は10~14年、工藤会の「金庫番」とされる山中被告と共謀。建設業者などからの上納金のうち、約8億1千万円を個人の所得にしながら別人名義の口座に隠し、所得税約3億2千万円を脱税したとされる。
争点は、上納金の一部が、野村被告のものと言えるかどうかだった。
検察側は、入金記録や元組関係者の証言などから、野村被告ら最高幹部と会本体の取り分が、それぞれの口座にほぼ一定の比率で分けられ、入金されていたと指摘。この金が、親族への送金など野村被告の私的な用途に充てられていたとして、野村被告の個人所得で課税対象に当たると主張していた。
弁護側は、上納金が野村被告ら最高幹部や会本体に分けられていたとする元組関係者の証言について、「重要な事実に変遷がある」として信用性を否定。野村被告個人の用途とされた出金はごく一部である上、立て替えたに過ぎないとして、「口座の金は工藤会のもので、課税対象ではない」と反論。無罪を主張していた。
野村被告は元漁協組合長射殺▽看護師刺傷▽歯科医師刺傷▽県警元警部銃撃の各襲撃事件に関わったとして、殺人や組織犯罪処罰法違反(組織的な殺人未遂)の罪などでも起訴されている。公判の日程は未定。