内部通報制度の改正やその通知に関する財務省の文書
財務省が昨年末、内部通報制度が使いやすくなるよう省の規則を改正したのに、全国の財務局への通知が3カ月以上放置されていたことがわかった。この間、森友学園との国有地取引に関する決裁文書の改ざんが発覚したが、内部通報はなく、制度のあり方が国会で取り上げられたのを機に放置が判明した。
職場での不正を内部告発した人を法的に保護する「公益通報者保護法」が2006年4月に施行。財務省も同月に内部通報制度を設け、省内からの通報を受け付け始めた。09年1月には外部の弁護士が通報を受けるようにもした。財務省の内部文書によると、国の行政機関に適用される「通報対応ガイドライン」が2017年3月に改正されたのに応じ、財務省は17年12月22日付の「訓令」で事務手続きの規則を改正。契約先の事業者や退職者、匿名の通報も受理するなど間口を広げ、通報者に不利益な扱いがあった場合の救済措置も明文化した。
だが、全国に10ある財務局、財務支局に改正を知らせるために秘書課が作成した通知文の発送が省内で滞り、各財務局にメールで届いたのは今年3月26日だった。新しい規則は1月1日に施行されており、内部通報を担当する各財務局の監察官を含め、財務局職員の多くは約3カ月、これを知らない状態だったとみられる。
秘書課によると、通知文の送付を地方課に依頼したが、地方課の担当者がそれを地方に知らせるべきものと認識せず、周知の連絡が自分個人に来たものと誤解したという。秘書課も周知の結果を知ろうとはせず、その結果、通知は放置された。一方、全国の税関には関税局から昨年12月に通知されたという。
財務省理財局は17年、森友学園との国有地取引をめぐる決裁文書を改ざん。財務省の調査報告書によると、近畿財務局職員の中には改ざんに強く反発し、上司の管財部長に相談した人がいた。また、今年3月7日には職員の一人が自殺していた。6月26日に開かれた公文書管理委員会では、内閣府の畠山貴晃(たかてる)・公文書管理課長が「財務省のケースでも、問題意識を持っていた職員がいた」と指摘。新規則が周知されていれば、内部通報へのハードルが低くなった可能性がある。政府は今後、内閣府の独立公文書管理監の下に公文書監察室を新設し、公文書管理の不正に関する通報を受け付ける方針だ。
財務省広報室は、17年12月から改正後の規則の情報を財務省のホームページには掲載していたとし、「匿名でも内部通報として受け付ける旨を周知している」と主張している。(編集委員・奥山俊宏)