今年の夏は7月20日と8月1日が土用丑(うし)の日。店先に、いつもより多くのウナギが並ぶ季節だ。平成を振り返れば、ウナギをめぐる状況はめまぐるしく変わる「激動期」だった。いま、真剣につきあい方を考える時期に来ている。
「過去にないほどの鰻(うなぎ)シラス不漁による価格高騰が続いており、価格改定させていただきます」
東京都渋谷区の老舗鰻屋「渋谷 松川」は今春、うな重を500円値上げし、メニューにこんなお知らせを挟んだ。
稚魚シラスウナギの不漁は深刻だ。今年は養殖池に入れた稚魚の量は約14トン(5月時点)で、過去2番目の少なさだ。全国的に値上げも相次ぐ。
ウナギの供給量が激減する中、業界は「有効活用」を模索している。
養殖業者の団体、日本養鰻(ようまん)漁業協同組合連合会は資源保護を図るため、今春、1匹を従来のものより太らせて出荷する「太化(ふとか)」を強化すると決めた。通常は1年半ほど育てて200~300グラムにするが、さらに数カ月育て、400グラム前後にする。太った分、肉厚になるため、ウナギ店の業界団体にも「太物(ふともの)対応の調理や盛り付けを工夫してほしい」と要請した。
静岡県湖西市の養鰻場「かねふる」は数年前から、通常より3カ月ほど長く育てた太物も出荷している。「時間とコストがかかるが、あまり人気はない」と同社の浅井信秀さん(44)。「松川」店主で全国鰻蒲焼(かばやき)商組合連合会理事長の三田(さんだ)俊介さん(75)は「味ややわらかさは通常サイズと変わらない」。店で一番安い3千円のうな重に太物を使う。ただ、同じ重量だと肉厚な分、上から見ると小さく見え、お重にすき間ができるのが悩みという。
コンビニも工夫を重ねている。…