財務省(旧大蔵省)の幹部が在任中を回顧して語った口述記録
国家財政の面からみると、平成はその収支バランスが崩れ続けた時代だった。なぜ財政再建はできなかったのか。朝日新聞は今回、財務省(旧大蔵省)の歴代幹部が在任中の政策を振り返った「口述記録」を情報公開請求で入手した。開示された1982~2001年の25人分、1千ページ超にわたる官僚たちの証言をひもとくと、少子高齢化による低成長時代に突入したという「不都合な真実」に向き合わず、消費増税が実現してもその成果を「浪費」し続けてきた政官の姿が浮かび上がってくる。=敬称の肩書は当時
守られなかった増税の「密約」
「もともと5%であるべき消費税率を3%にした結果、いずれ財政収支悪化を招く形で出てくる、との懸念を皆持っていた」(90~91年に大蔵事務次官を務めた小粥正巳氏)
消費税を巡るボタンの掛け違いは、平成に入る3年前に始まっていた。
「あんなことを言ってもらっては困ります」。86年6月15日、日曜日の首相公邸。怒り心頭の様子で苦言を述べる大蔵省の吉野良彦次官と水野勝主税局長を、中曽根康弘首相はなだめた。
「心配するな。選挙が終わったらうまくやるから。これは政治に任せろ」
吉野氏らがわざわざ休日の早朝に押しかけたのは訳がある。その前日、衆参同日選の決起大会で中曽根氏はこう発言していた。
「大型間接税をやる考えはない」
このとき、中曽根氏と大蔵省には「密約」があった。選挙前の税制論議は所得税などの大型減税だけにし、選挙後に新たな間接税導入を進める――。密約に従い、大蔵省は所得税などの減税方針を先行して発表していた。
2度の石油危機を経て、日本経…