2017年9月7日、会計検査院や国会への対応をめぐる主なやり取り
森友学園への国有地売却をめぐり、共産党は5日、取引の経緯を調べていた会計検査院や国会への対応について記された2種類の文書を、独自に入手したとして公表した。約8億2千万円のごみの撤去費を検証するために検査院が試算した金額を報告書に書かれないよう、財務省と国土交通省が協議したなどとする内容が記載されている。
撤去費は土地売却の際の大幅な値引きの根拠となっており、その妥当性が焦点となっていた。安倍晋三首相は「価格が適正だったかは会計検査院が審査すべきだ」と述べていたが、文書は、検査院による具体的な価格の指摘を避けようとする両省の姿勢がうかがえる内容となっていた。
公表された文書は「会計検査院報告原案への主な意見」と、「航空局長と理財局長との意見交換概要」。共産党は、ともに国交省が作成したものとみている。
「主な意見」は2017年8月に作られた。会計検査院から事前に伝えられた内容に対し、国交省の見解が記されている。
検査院はごみの撤去費の試算額として「1億9706万余円」や「4億4367万余円」と伝えたが、国交省は「金額が独り歩きすることは容易に想像され、今後の議論に無用の混乱を招くおそれがある」などとして、報告書への記載に対し、「撤回を強く要請する」と主張したと記されている。
「意見交換概要」は、同年9月7日、財務省理財局の太田充局長と中村稔総務課長(当時)、国交省航空局の蝦名邦晴局長と金井昭彦総務課長の4人が、会計検査院などへの対応について意見交換をしたとされる内容が記されている。
両省は検査院に試算額を出させないことが「重要」と一致。理財局側は「それが難しい場合には、失点を最小限にすることも考えなくてはいけない」とし、「金額よりトン数のほうがマシ」と述べたとされる。また、国会に決裁文書などの文書をどこまで出すかについて、理財局側が「政権との関係でデメリットも考えながら対応する必要はある」と話したとしている。
検査院は同年11月、ごみの量が最大7割少なくなるとの試算を盛り込んだ報告書をまとめたが、撤去費の試算額は示さなかった。
国交省は5日の衆院財務金融委員会で共産党議員から文書について問われ、「主な意見」については「検査を受ける立場であるため、文書の有無を含め、差し控える」とし、「意見交換概要」は「行政文書として保存されてはいなかったが、総務課長によれば、個人的なメモとして作成したような記憶もあるということだった」と述べた。
検査院は朝日新聞の取材に、「一定程度まとまった内容を相手方に文書で示すのは通常行っていること」としたうえで、「試算額を出さなかったことを含め、報告書は独立した立場で自律的に作成した」としている。