AI(人工知能)の開発やビッグデータの活用で後れをとっているのでは――。長野県軽井沢町で19、20の両日開かれた経団連の夏季フォーラムでは、デジタル社会への対応で米国や中国に先行されているとの焦燥感が強くにじんだ。
20日午前、「デジタライゼーション」をテーマにした分科会では、大手企業の経営者がビッグデータなどで正面から議論を交わした。
セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長は、商品の棚卸しにロボットを使い、スマホで決済をする無人店舗など先進的な米国の小売業の現状を報告。そのうえで顧客データの収集や活用をいち早く進めてこなかったことを反省点として挙げた。現在、電子マネーによるサービスを始めており、百貨店のそごう・西武、ロフト、赤ちゃん本舗などのグループの情報を横断的に集めるアプリを開発しているという。
アステラス製薬は、大学や企業など90団体が集まり、AIを使った創薬などの開発に取り組んでいることを説明。みずほフィナンシャルグループもAIで顧客の信用力などを図っている。参加者からは、検索サイトやSNSの運営で圧倒する米国、国家が国民の情報を集める中国を警戒する声が相次いだ。
フォーラムの最後に記者会見した中西宏明会長(日立製作所会長)は「世界が新しい挑戦をしていく中で、意欲的に向こうが手を挙げている」と米中がリードする現状を認めながらも、「ビッグデータなどで日本が大きく遅れているとは思っていない。我々も負けずに手を挙げていく。日本には蓄積と大きなチャンスがある」と結んだ。(加藤裕則)