羽田空港で2016年5月、離陸しようとした大韓航空機のエンジンから出火した事故で、国の運輸安全委員会は26日、調査報告書を公表した。エンジン内の部品が製造ミスの影響で破断し、衝撃で傷ついた箇所から燃料が漏れて引火したと指摘した。
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事故は16年5月27日正午すぎに発生。韓国・金浦行き2708便(ボーイング777―300型、乗員乗客319人)の左エンジンが離陸滑走中に壊れて出火、スライドで緊急脱出する際に乗客40人がかすり傷などの軽傷を負った。
報告書によると、エンジンは04年製造で米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)製。飛行時間は4万1594時間だった。今回の調査で内部の「タービン・ディスク」という円盤状の部品に製造ミスが発覚。別の部品を取り付けるための溝に、本来あってはならない段差があった。
ディスクが回転する際に段差に力が集中して金属疲労が進み、亀裂が入り破断したとみられる。衝撃でエンジンカバーなど別の部品も壊れ、燃料や潤滑油が漏れて引火したという。
段差は設計上の許容範囲の5倍もあったが見逃され、14年11月に大韓航空が行った検査時には亀裂も生じていたとみられるが、発見できなかった。
再発防止のため、P&Wはディスクの製造工程を自動化して人的ミスが起きないようにした。また、破断した箇所を新たに重点検査の対象に指定した。大韓航空はP&Wの指示にしたがいエンジン検査を強化した。各国の航空機で使われているP&W製の同型エンジンには、同様の製造ミスはなかった。
脱出にも不手際があった。報告書は、非常脱出前に乗務員が確認すべき項目のリストを副操縦士がすぐには見つけられず、対応に手間取ったと指摘。定位置に置かず、出発前の書類確認も不十分だったという。また、ドアを開いた時点でエンジンがまだ動いており、人が外に出れば風圧で飛ばされる恐れがあった。脱出用のスライドの一つは風圧で折れ曲がり使えなかった。大韓航空は脱出はエンジン停止後に行うよう訓練を通じ徹底したという。(伊藤嘉孝)