今年上半期(1~6月)に全国の警察が把握した振り込め詐欺など「特殊詐欺」の被害額は174億9千万円で、昨年の同時期より13億3千万円(7・1%)減った。認知件数も7・6%減の8197件だった。だが、身内などを装うオレオレ詐欺は22・7%増の4560件(被害額96億3千万円)と大幅に増え、警察庁は「深刻な状況」と警戒している。同庁が2日発表した。
手口別にみると、医療費や税金が戻ると偽る還付金詐欺の認知件数と被害額がともに5割以上減って853件、10億7千万円だった。警察庁は、金融機関の職員らがATMで声をかけるなどの対策が浸透したとみている。
一方、オレオレ詐欺では、子や孫になりすまして電話をかけた後、警察官などを名乗ってキャッシュカードを受け取りに来る手口が目立つ。キャッシュカードを手渡しでだまし取る手口は、88・8%増の2741件だった。
特殊詐欺全体の認知件数は38道府県で減ったが、東京や神奈川など首都圏を中心に9都県で増えた。警察庁は、犯罪グループの拠点から近い大都市圏で、時間や労力をかけずに犯行を重ねる傾向が強まっているとみている。被害者の75・7%は65歳以上の高齢者だった。
上半期に摘発したのは1325人で、昨年同期より269人増えた。少年が368人で昨年同期の約2倍。外国人も25人増の48人だった。いずれも現金を受け取る「受け子」の役割が多いという。警察庁は犯罪グループ内で人手が足りなくなり、若い世代や外国人を巻き込んでいるとみている。
摘発された少年らは高校の同級生や勤務先の同僚、パチンコ店やゲームセンターで知り合った人から声をかけられる例が目立つという。最年少は14歳だった。外国人を国別でみると、元々多かった中国や韓国に加え、上半期はタイやベトナムなどに広がった。(小林太一)