今日さえ良ければそれでいいといわんばかりの刹那(せつな)的な経済政策がはびこっている。政府は財政健全化の目標をないがしろにしているし、国債市場、株式市場の支え役と化した日本銀行は異次元緩和をやめられず、恒久化の兆しさえある。そうやって景気てこ入れに走ることでかえって日本の将来を危うくし、若者の希望を奪ってはいないか。
年に何回か大学の授業で話をすることがある。ここ1年で接した学生は約800人。そのつど彼ら彼女らにたずねてみる。「日本の未来に楽観的? それとも悲観的?」と。驚くのはどの大学でも学生の99%が悲観的なことだ。
理由もたずねてみた。日本の競争力の後退、人工知能に仕事を奪われる……。今風の課題をあげる学生は思いのほか少数派だった。多数があげたのは「人口減少」「超高齢化」「社会保障の未来」。
つまり学生の不安をなくすのに必要なのは、物価を上げることでも株価を維持することでもなかった。地に足の着いた課題の解決なのである。
「人口減少と社会保障」の著書がある山崎史郎氏を訪ねた。厚生労働省の官僚時代、「ミスター介護保険」と呼ばれた社会保障のプロだ。
――若者は人口減少を悲観して…