記者が見た西日本豪雨(愛媛・西予)
多くの命を奪った豪雨災害から約1カ月。被災地で取材を重ねてきた記者たちの思いは。
7月8日、浸水被害が大きかった愛媛県西予市野村町の中心部に入った。当時は、浸水した家屋から運び出された大量のがれきが道ばたに積まれていた。
被災地のために今できること…西日本豪雨支援通信
西日本豪雨、列島各地の被害状況は
25日に改めて訪れると、がれき撤去は一段落した印象を受けた。戸が取り払われた家々の中は、床もはがされ、がらんとしていた。「無事避難して息子の家にいます」。所在を知らせる貼り紙がある家もあった。
肱(ひじ)川沿いに住む大塚キクヱさん(70)の自宅は2階まで浸水した。被災後は避難所から自宅に通い、1階の片付けをほぼ終えた。今後はひとまず、2階の部屋を直して生活する。「家が残っているし、仮設住宅を使わなければ他の人が入れる」。この地区は半分ほどに住民が減りそうで、「みんな抜けていくのはちょっと寂しい」とこぼした。
9日に取材した松本ともえさん(61)にも再び会うことができた。営む酒屋は2階まで浸水。返品できていない商品がまだ倉庫にあった。店の再開を聞くと、「後悔しないよう、ゆっくり考えたい。今後も水害が起きないとは思えない」。
野村町の浸水は、国土交通省が管理する野村ダムの放流も一因だったとの指摘がある。住民への情報提供などが適切だったかを検証する19日の有識者会合も取材した。国交省側は「操作規則に従った」と主張したが、住民の不安を少しでも減らすためには、住民への情報伝達だけでなく、操作規則に見直す余地がないかどうかについても、しっかりと検証すべきだと思う。(大川洋輔)