西日本豪雨による土砂崩れなどで100人以上が死亡した広島県は、被災者らを対象に避難した理由などについて、聞き取り調査を実施する方針を固めた。今回の被災状況を踏まえた意思決定の傾向を、専門家らと分析。その上で「どうすれば避難するか」を解明し、早期避難で「減災」につなげたい考えだ。
広島県関係者が明らかにした。調査は、今年秋には始めたいとしている。東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島の3県や、熊本地震で被災した熊本県が実施した調査はなかった。
被災地のために今できること…西日本豪雨支援通信
西日本豪雨、列島各地の被害状況は
県によると、調査は県内の各被災地ごとに実施。住民が避難するか否かを決めたきっかけを聞き取り、行動心理学や行動経済学に照らしてパターンを調べる。
また県内各市町が、避難勧告・指示の際にどういった内容で伝えたかも検証。広島市が今回送信した避難勧告や避難指示発令を知らせるメールでは、「速やかに」「緊急に」などと深刻さを示す言葉で呼びかけていた。こうした表現が避難につながったかを調べることで、どんな表現で発信するべきかを検討する材料とする。
2014年の広島土砂災害では、避難勧告を発令する約1時間前に人的被害が発生したケースもある。県の防災担当の幹部は「『想定外』のことは起こりえる。調査で人々がどう判断したかを検証し、早く避難するという意識を持ってもらえるようにしたい」としている。(渡辺元史、北村浩貴)
「自分は大丈夫」の意識、分析重要
愛媛大学工学部の森伸一郎准教授(防災工学)の話 人は往々にして「自分は大丈夫」という意識がある。「避難」の意識について行動心理学に照らして調査することは意味があり、被災者の「生の言葉」を収集し、複数機関で分析するべきだ。今回の調査結果を活用し、きちんと避難行動に移れるよう、被災者の実体験を踏まえた防災教育に取り組む必要がある。