群馬・長野の県境近くで10日、9人が乗った群馬県の防災ヘリコプターが墜落した。いったい何が起きたのか。
目撃者「手届くぐらい低空飛行していた」 防災ヘリ墜落
国土交通省によると、墜落した米ベル社製の412EPは国内で47機が登録されている。警察や海上保安庁などの官公庁でも使われ、同型機を所有する航空会社の関係者によると「世界的に長く使われている操縦しやすい機体」という。
前橋地方気象台によると、午前10時ごろの現場付近は曇りで風はほぼなかったが、雷注意報が出ていた。山では気流や局地的な天候変化も多い。17年3月に長野県の防災ヘリが墜落して9人が亡くなった事故でも、険しい山岳地帯特有の気象変化などの操縦の難しさが関係した可能性が指摘されている。
今回の飛行は、管制官の指示ではなく操縦士が目視で操縦する「有視界飛行」だった。楠原利行・第一工業大教授(航空工学)は「山の気象を見誤ったのではないか」と指摘する。「台風13号が接近したばかりで不安定な気象のなか、雷雲や積乱雲の中に突っ込んだのかもしれない。局地的に発生した雷雲などにより生じたダウンバースト(下降噴流)が、墜落を引きおこした可能性もある」と話す。
航空評論家の青木謙知氏は「機体が風で水平に50メートル流されただけで斜面の木にぶつかる危険がある」と山あいでの飛行の難しさを強調。「山岳地のヘリ事故の多くが高度の下げすぎで起きる。今回の飛行は登山道のチェックが目的だったため、ルートの中に危険な岩などを発見して、確認のために低く飛んで木にひっかかった可能性もある」と話した。
過去の主なヘリコプター事故
1991年8月 兵庫県村岡町(現香美町)の山中に阪急航空のヘリが墜落。8人死亡
94年12月 北海道熊石町(現八雲町)の山中で航空自衛隊のヘリが墜落。5人死亡
96年4月 長野市で取材中のテレビ信州のチャーターヘリと長野放送のヘリが衝突。6人死亡
97年1月 愛知県岡崎市の山中でトヨタ自動車のヘリが墜落。社員ら8人死亡
2010年7月 埼玉県秩父市の山中で、救助活動中だった県の防災ヘリが墜落。5人死亡
8月 香川県多度津町の瀬戸内海に、第6管区海上保安本部のヘリが墜落。5人死亡
17年3月 長野県松本市の山中に県防災ヘリが墜落。9人死亡
11月 群馬県上野村の路上に東邦航空のヘリが墜落。4人死亡
18年2月 佐賀県神埼市の住宅に陸上自衛隊ヘリが墜落。乗員2人死亡、小学生女児がけがをし住宅が炎上