安倍晋三首相は12日、地元・山口県下関市で講演し、自衛隊の明記などを盛り込んだ自民党の憲法改正案について「次の国会に提出できるよう取りまとめを加速すべきだ」と語った。9月の党総裁選で改憲を争点にする考えも改めて示し、「総裁選が党員の間で議論を深め、一致団結して前に進むきっかけとなることを期待する」と話した。
首相は7月20日の記者会見で、党改憲案の「速やか」な国会提出に意欲を見せたが、具体的な時期には言及しなかった。12日の講演では「次の国会」と踏み込み、秋の臨時国会や来年の通常国会への提出をめざす考えを示した。
首相は講演で、自衛隊の明記や教育無償化など党の改憲4項目を挙げ、「いつまでも議論だけを続けるわけにはいかない」と主張。9条への自衛隊明記について、「全ての自衛官が誇りを持って任務を全うできる環境を整えることは、政治家の責任。自衛隊を明記することで私はその責任を果たしていく決意だ」と強調した。
首相には総裁選を機に改憲機運を高める狙いもあるが、総裁選への立候補を表明した石破茂・元幹事長は12日、記者団の取材に応じ、首相の発言に対して「党議決定もしていない。もう一度、議論が必要だ。最低限、党議決定のプロセスが必要だ」と指摘。9条改正には「丁寧な手続きが必要」であり、参院選挙区の合区解消や緊急事態条項の創設を念頭に「憲法改正は、急ぐものや多くの党の理解を得られるものからやろうということだ」と述べた。
一方、連立を組む公明党は早期の改憲に慎重な姿勢を崩していない。森友・加計学園問題で国民から厳しい視線が向けられる中、野党がさらに反発を強める可能性もあり、改憲論議の道のりは険しい状況だ。