大阪府警富田林署で留置中の樋田淳也容疑者(30)=強制性交、強盗致傷などの容疑で逮捕=が逃走してから、19日で1週間。3千人態勢での捜索が続く中、樋田容疑者はひったくりを繰り返しているとみられている。面会室に1人でいるのに気づかず、逃走されるという「前代未聞」の失態は、なぜ起きたのか――。
「ガラ(容疑者)に飛ばれました」
12日夜、携帯電話で報告を受けた府警幹部は耳を疑った。樋田容疑者が面会室で弁護士と接見後、双方を隔てるアクリル板を押し曲げて逃げたというのだ。
「聞いたことない。どうなっとるんや……」
午後9時43分に事態を把握した富田林署は約200人の署員全員を招集。だがすでに樋田容疑者は面会室の外にあった署員のスニーカーに履き替え、署の敷地内にあった脚立で塀を越え、そばにあった赤い自転車を盗んで逃げたとみられている。署の付近の複数の防犯カメラが樋田容疑者の姿を捉えたのは、逃走発覚の1時間10分前。致命的な「タイムロス」だった。
「面会室から逃げるなんて、思ってもみなかった」「署は何をしていたのか」。当初の取材に対する府警幹部らの言葉には、混乱とあせりがにじむ。
強制性交や強盗致傷容疑で逮捕された容疑者の逃走。その周知という点でも、府警は後手に回った。
13日午前0時55分ごろ、富田林署は事件を発表。その際に報道各社から近隣住民への周知について問われると、「事実を確認中。署の中にいる可能性もある」とした。府警のホームページで登録した人にメールで事件を通知したのは、発覚から約9時間後だった。
発表後、事件は大きく報じられ…