これまで経験したことのないような災害が迫っているとき、いかに住民を迅速に避難させるか。その難しさは、11府県に特別警報が出された7月の西日本豪雨でも浮き彫りになった。過去の教訓を生かして、避難勧告や指示の出し方を改めた自治体もある。
特別警報で避難指示、「実際に避難」は住民の3%弱
7月7日、愛媛県宇和島市の吉田町で、11人が土砂災害の犠牲になった。「状況がめまぐるしく変化し、対応が難しかった」。市危機管理課の山下真嗣課長はそう振り返る。
市は6日午前5時、津島町の土砂災害警戒区域(1059世帯2177人)に避難勧告を発令したが、この時点で目立った被害はなかった。事態が深刻化したのは7日に入ってから。猛烈な雨が襲い、午前7時、市全域の土砂災害警戒区域(3万7321世帯7万9430人)に避難勧告を発令した。その後も記録的短時間大雨情報が出され、住民から「土砂崩れが発生した」「川が氾濫(はんらん)した」などとひっきりなしに通報が入るようになった。市によると、亡くなった11人は自宅などで土砂災害に遭い、大半が7日朝ごろに被災したとみられるという。
気象庁が特別警報を出したのは、雨のピークが過ぎた8日午前5時50分。ただ山下課長は「記録的短時間大雨情報などが発表された7日朝は、すでに危険な状態だった。その前の段階で早めの避難を促す工夫をしていきたい」と話した。
2015年の関東・東北豪雨で鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市。決壊地点に近い地区に避難指示が出たのは、特別警報の約5時間半後だった。
この教訓から市が進めたのは、…