オウム真理教による一連の事件で、13人の元教団幹部の死刑が執行されてから約1カ月。事件を後世に伝えるため、模索を続ける関係者にとって課題の一つは、教団に関する様々な資料をどのように保存、活用するかだ。
オウム暴走、三つの転機 風呂場の「事故」から始まった
【トピックス】オウム事件、死刑執行までの流れ
「テレビにも新聞にも出ない、起訴されず犯罪として扱われないオウムの悲劇があると伝えたい」
日本脱カルト協会が25日、東京都品川区の立正大で開いたシンポジウムで、元信者の40代男性はこう語り、消息をたった教団内の友人男性の話をした。友人は、薬物を飲んだり、高温の湯につかったりする修行をしていたという。
続いて登壇した、50代女性の元信者も、正体の分からない液体を飲んで呼吸が止まる信者を目にしたことや、教団の医師から「搬送中に信者が亡くなった」と聞いた経験を振り返った。脱会支援を続けてきた滝本太郎弁護士は修行中に死亡した信者のリストを紹介し、「教団による薬物使用の実態はほとんど明らかになっていない。警察は記録を押収したはずだが、裁判に出ていない」と訴えた。
上川陽子法相は今月3日、一連の事件で起訴された192人の裁判記録や、13人の死刑執行に関連する行政文書を永久保存する意向を表明した。ただ、保存されるのは刑事裁判に提出された証拠に限られ、閲覧・コピーを認めるかどうかは、検察庁などの判断に委ねられている。脱カルト協会事務局長の山口貴士弁護士はシンポでこうした点に触れ、「再発防止のためにも国は刑事記録だけでなく捜査資料を保存し、より自由に使えるようにして欲しい」と求めた。
事件を知る上で欠かせない資料…